MTBシーンの今後について

先日「MTBで山を走ることは罪なことなのか?」というエントリーを上げました。

記事で触れた「MTB日和」が発売になったので購入して読みました。

 

(全然関係ないけど、今号は内容良い!重力技研によるジオメトリー解説に、栗瀬裕太氏によるジャンプ&パンプトラックのレクチャー、2021ハードテールの試乗等)

アンケート結果には8ページを割いている。1700名以上から回答があったようで、日本のMTBシーンの現状を捉える貴重なものだ。

まぁ内容は買って読んでもらうとして。。。
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ここの自由回答は結構気になってたんだよね。

 

どんな意見が載ってたかっていうと。。。

  • 正直ローカルとしてはこれ以上来てほしくない、迷惑
  • 地域貢献を押し付けられると走りたくなくなる
  • 寄付みたいなお金の流れが見えるようにしてほしい

みたいな。賛否分かれてますね。ネガティブな意見も含め、広い意見を載せてくれた編集部に感謝。まぁ詳細は買って読んでください。

アンケート読んで感じたこと、なんとなくだけど。

ひっそりと仲間内でやりたい地方のローカルライダー
地域貢献活動に賛成だけど時間的な制約が大きい都市部ライダー

という大きなグループがあって、この2つの間のコンフリクトがあるのかなって思った。
(紙面では単純集計しかしてなかったけど、クロス集計したりして分析するともっと見えてくるような気がする)

 

里山のトレイルライドについては、自分なりに整理して、だいたい4つの観点があるのかなと思う。

トレイルに対するダメージと、その補填としての地域貢献活動

トレイルは走ると痛む。やっぱりですね、トレイルを走ると路面にダメージあるわけですよ。事実として。首都圏の某トレイルなんてアクセスが良いもんだから掘られて根っこだらけじゃないですか。走れば走るほどトレイルは荒れる。んで、その補填として各種の地域貢献活動を行ってマイナス分を取り返す、という形がある。
トレイルって公共財に近い資産なので、その利用には慎重さが求められると思う。

トレイルの利害関係者

トレイルに関わるのはライダーだけじゃない。地権者、地域行政、近隣住民、ハイカー、トレイルランナー、林業関係者、ハンターEtc.
ライダー以外から見たら、いい年こいたおっさんがごっつい自転車で坂道を暴走しているようにしか見えないわけで、冷静に考えると、まぁアレです、珍走団w
そういう人たちとどうやって共存、あるいは棲み分けするのか。大きなところではここが一番大事。

トレイルが受け入れられるキャパシティー

トレイルのキャパシティーは限られている。トレイルって、許容人数が限られてると思うんですよね。道が狭いから一度に大人数が走れない。また、ライダーが多すぎると道が荒れるし、逆に少なすぎると自然に還る。たぶんだけど、ローカルライダー+α程度が適正値なんじゃないかな。トレイルの情報がネットに出回らないのはこれが理由。MTBシーンが拡大しても、結局このキャパ問題が足かせになって問題が発生する。
ちなみにロードバイクはこのキャパシティーが大きい。富士ヒルなんてコロナ前は1万人以上参加してた。ロードバイクは極論キャパシティーが無限。公道すべてがフィールドになる。
つまり、本質的にMTBはロードに比べてボリュームが小さくならざるを得ない。

地方/首都圏ライダーとボランタリズム

ローカルライダーの負担が大きい。おそらく、地域貢献活動に力を尽くしているのは地元のローカルライダー。なんなら走る時間よりそっちの方が長かったり。そしてそれらは全部手弁当。ボランティア。無償の愛。「正直ローカルとしてはこれ以上来てほしくない、迷惑」って意見から伺えるのは「首都圏ライダーは俺たちが愛を注ぐトレイルをタダで走るフリーライダーだ。俺たちは割を食ってる」って思ってるってこと。
首都圏ライダーは走るだけ。ここに非対称性がある。まぁそれをわかってるので、「寄付みたいなお金の流れが見えるようにしてほしい」って言ってる(←この発言が都市部ライダーから発してるのかはわからないけど)。このコンフリクトは意外と根深いと思う。
いや、分かります。ローカルライダーの人たちってみんな底抜けに人が良いです。走らせてくださいって言って嫌な顔する人なんてすごく少ない。拒否されたことなんてほとんどない。本気でトレイルシーンを盛り上げて行こうと思ってる人たちばっかり。マジで足を向けて寝れないと思ってます。でも、「ありがとう」さえあれば良いってのは不自然な気がする。ある種のやりがい搾取に近いような。やっぱり何か形あるもので報いられるべきだって思うんですよね。

 

・・・

痛むトレイル、キャパは有限、ローカルは人が増えてほしくない(人もいる)、周りからは珍走団みたいな目を向けられる。これでどうやってMTBシーンを拡大していけと?そう考えると、里山トレイルライドに未来は少ないと結論づけざるを得ない。「地域貢献活動に参加していけばMTBシーンはもっとクリーンになってもりあがると思うよ☆」な~んてのはお花畑、幻想にすぎないんじゃないかな~。いいとこ現状維持。やる意味はあるし意義は大きいけど、全てを解決する打ち出の小槌ではない。

 

解決したかったら、「ローカルライダーに有形で報いつつ」、「全体としてはトレイルを走るライダーの数をコントロール」する必要がある。資源管理。ウナギと同じ。

 

解決策
色んな解決策があると思うんだけど、個人的には「活動を経済に組み込む」こと、「フィールドを分ける」ことがベストだと思う。

 

MTBパークの充実
パークは一度に沢山の人数が走れるし、コース整備のフィー(雇用)が発生するし、秘匿する必要がないし、近隣住民に配慮する必要も少ないし、いいことずくめ。プロのトレイルビルダーという職業で食える人も増えて、コースの楽しさも、ライダーのレベルもガンと上がることが期待できる。「活動を経済に組み込む」こと、「フィールドを分ける」こと、両方を実現できる。
今でも既に沢山のパークがあるけど、他にも作っている情報を耳にするので今後もどんどん増えると思う。そして、今後はこういうパークで走るのが「普通」になってくと思う。スキーで言うスキー場のポジション。
ただ、ビジネスとして厳しい部分もあると思うので、行政や税制面の助成等があるともっと良い。コロナの影響でアウトドアスポーツには追い風だと思うのでぜひそういう後押しが欲しい。
過去にいくつかエントリーを書いてるけど、単純にパークライドは楽しいしね。

有料ガイドツアー
じゃぁ里山トレイルはっていうと、これは有料ガイドツアー化しちゃう。今はローカルライダーのボランティア(無償の愛)で成り立ってるわけです。それを地域経済に組み込む。山伏トレイルやトレイルカッターがやっているように、有料化する。雇用の安定という面もあるし、予算があれば活動も捗る。良いことずくめ。金があれば地域住民や地権者とのコンフリクトを解消しやすいわけで。里山を走る人数もコントロールが容易。これも「活動を経済に組み込む」こと、「フィールドを分ける」こと、両方を実現できる。スキーで言うならバックカントリーのガイドツアー。

トレイル保全活動のNPO化
とはいえ、有料化が難しいトレイルも多い。なんなら住宅街のど真ん中にトレイルヘッドがあって、入口も出口も沢山あるってトレイルが多いし。そういうところはNPO化して寄付を募る。「俺たちローカルは色々手を尽くしている。お前たちは金を出せ」ってスタンスの方がお互い気持ち良いと思う。トレイルヘッドやウェブサイトに、Pay系の支払いQRコード載せるだけで結構チャリンチャリン集まるんじゃないかな。フィールドを分けることは出来ないけど、「活動を経済に組み込む」ことは出来る。10年前って、個人間の金銭移動は現金か銀行振込くらいしかなくて結構手間があったけど、今はpay系をはじめ少額の金銭移動がすごくイージーになってるという世の中の変化もある。
NPO化すれば、都市部ライダーも貢献できる余地が増える。金を出すだけじゃなくて、経理とか、ウェブサイトの作成とか、広報活動Etc.そういった部分ならリモートで参加できるし。
金銭が絡むことを嫌がるひとが多いと思うんだけど、その方が良いと思うんだよ。
問題は、寄付とかを募るサイトでアクセスを集めると、「へーあそこにトレイルがあるのか」ってなってむしろ人が集まり過ぎるかも?そこまで考えると現状通りのやり方が適してるトレイルもありそう。

まとめ
どうかな?「活動を経済に組み込む」こと、「フィールドを分ける」ことで、今ある課題のいくつかを解決できるかもしれない。やはり今のやり方はサステナブルではないと思う。シーンを盛り上げるなら、そのシーンを支える活動がサステナブルでなくてはならない。

結局のところお金、大事なんですよw

まぁこれは個人的な意見だし、もっといろんな人の意見が知りたいところです。

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