アジア圏の新興バイクメーカーについて

ロードバイク

中華カーボンメーカー一覧」、エントリーを上げて以来多くのアクセスがあり、たくさんの人が興味を持っていることが伺える。昨年くらいまでは、そのままズバリ「中華カーボン」とか「中華 ロードバイク」などの検索ワードがほとんどだったのだが、最近特定のブランドを指名して検索する人が増えてきた。具体的にはSEKA、ELVESなどだ

このデータは幣ブログのアクセス解析結果(の一部)。1年前の8~9月と今年の8~9月の上位検索ワードを並べてみた。

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アクセス解析結果

昨年ランク外だった「SEKA」「ELVES」が上位にランクインしている。そして、この辺のメーカーはいわゆる中華カーボンメーカーとは一線を画する違いがある。こういった新興のメーカー達を「中華カーボンメーカー」としてまとめるのはちょっとそぐわないなと最近思い出した。上手い言い方はすぐには見つからないが、デローザやチネリを「イタリアンバイクブランド」と呼ぶように、単に「アジアンバイクブランド」と呼んでも良いかもしれない。

そんなアジアンブランドについてなんかをちょっとまとめた。

 

中華カーボンメーカーの定義

いわゆる中華カーボンメーカーの特徴と言うと…

  • OEMがメインでBtoCは片手間
  • 自社工場を持ち生産する
  • 自ブランドは無いかあっても小規模
  • R&Dやレース参戦はしない
  • 品質はバラバラ、低価格

どこかで見たようなデザインの真っ黒なフレーム、値段は安いが品質は不安定、という印象をお持ちの人も多いのではないか。自分もICANとCarbonda、2台持っている。

アジアンバイクブランドの定義

最近、ブランドで検索されるメーカーたちは上記のような特徴とは真逆だ。

  • 自ブランドでBtoCをメインに行う(OEMもある)
  • 必ずしも工場は持っていない(ファブレス)
  • UCI認証を取得し、レース参戦に積極的
  • SNS活用など消費者向けプロモーションも行う
  • 高品質・中価格

オリジナルのフレーム形状にきちんとした塗装、でもロゴは見慣れない…そういうやつら。価格は中華カーボンより高いが、品質面で安定している。OEMを主体とした縁の下の力持ちポジションではなく、自前のブランドで世界のバイクメーカーと戦っていくぜ!という意思を感じる。また、アリババなどを通じた中国/台湾からの直販ではなく、各国に代理店を置いたローカライズを積極的に行っているのも見てとれる。R&Dやブランディングのためだろう。

 

UCI認証について

これらアジアンバイクブランドを語るうえでもっとも重要なところは「UCI認証取得」だ。これがあればUCI準拠のレースに正式参加出来る。逆にこれを取得しないメーカーは、ぜんぶ単なる中華カーボンメーカーと言える。自分が乗ってるICANもUCI認証を受けていないので、本当はレース参戦出来ない*1。もちろんこういったメーカーが低品質かというとそういうわけではなく、OEM先がUCI認証を取っているケースがあるのでちょっと複雑だが。

ちなみに、コスト面が理由だと思うのだが、かなり有名メーカーでもUCI認証を受けていないバイクはそこそこある。一例を挙げるとデローザ。カーボンフレームのProtos、SK、IDOLは認証を受けてるが、金属フレームは全て未認証。厳密には超高級バイクTitanioでレース出るとアウト。あんまアマチュアはそこまで気にする必要無いと思うけどね。UCI認証マークなんてAVパッケージに貼ってあるホログラムシールみたいなもんで、UCIへの上納金システムの一部だし

 

具体的なアジアンバイクブランド

「アジアンバイクブランド」でいくつか自分が認識しているメーカーをABC順に紹介
Giant、Meridaは自明のことなので、紹介からは除外。

 

Elves

UCI認証 〇(VANYAR)
ブランドページ △(FB)
チームへの機材提供 〇(Malaysia DCA team)
日本代理店 〇
本社は中国ではなく台湾(深圳にもオフィスあり)。プロモーションは主に各国のインスタで行っているようだ。コスメティックスがかなりエキセントリック(婉曲表現)で、ヨーロッパ系メーカーにはまねの出来ない色彩感覚のフレームが多いイメージ。スポンサードしているMalaysia DCA teamについては詳細は不明。実業団チームのようだ。
https://www.facebook.com/117458969662203/posts/342690690472362/
【代理店】
kuwasan🧝🚴ELVESBIKE_JAPAN (@kuwaroto) | Twitter

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ELVES Vanyar

Gusto

UCI認証 〇(RCAはじめ5車種)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(Attaque Team Gusto)
日本代理店 〇
拠点は台湾。もはやここを「中華カーボン」扱いする人はもうほとんどいないと思う。普通に街のスポーツバイクショップで売ってるし。なんてったってあのタデイ・ポガチャル選手がここのワークスチームに過去在籍していたんである。日本のブログでもレビューが書かれているし、今回のエントリーでは一番有名だろう。知り合いが台湾旅行でレンタサイクルした際ここのメーカーだったと言っていたので、台湾内では沢山走ってると思う。
Attaquer |サイクルウェア 日本公式通販サイト | – Attaquer Japan

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Gusto RCA TEAM

JAVA Bikes

UCI認証 〇(FALCOはじめ5車種)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(Esprit Velo Cycling)
日本代理店 ×
名前が残念(検索性が非常に悪い)、Twitterで何回か目撃したことがある。すごく似た名前のSAVAとの関連性は不明。
https://www.javabikes.com/Team/
【Esprit Velo Cyclingのインスタ】
https://www.instagram.com/espritvelocycling/?hl=en

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JAVA FALCO

KAZE

UCI認証 〇(KANSAIはじめ7車種)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(BIKE AID)
日本代理店 ×
KAZE=風?webサイトにも「Spirit of Japan」と謳ってる。ところが調べた範囲では特に日本とは関係なさそうなタイのブランド。日本製アメリカンバイクもあるしね、こういうのはある程度はしょうがないね。
KAZE Bicycle | Spirit of Japan
【BIKE AIDのサイト】
https://www.bikeaid.de/en

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KAZE Kansai

Pardus

UCI認証 〇(ROBINはじめ12車種)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(PARDUS – TUFO PROSTEJOV)
日本代理店 ×
とてもとても大きなメーカー。なんてったってトラックの中国チームにバイクを提供してるんである。日本で言うブリジストンアンカーポジション?新興メーカーというのはあまりにおこがましいと思うが一応。日本で乗ってる人の話は聞いたことがないので、国内重視なのかな?
https://www.pardusbicycle.com/
【PARDUS – TUFO PROSTEJOVのサイト】
PARDUS – TUFO PROSTEJOV – 2018 – PAR Team Information – By: CyclingFever.com

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Pardus Robin EVO

Rollingstone

UCI認証 〇(FINDER)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(チームは)
日本代理店 ×
名前が残念その2。ググラビリティが悪いというか、ローリングストーンで検索すると間違いなくバンドの方が出てきてしまう。ガイツーでも見かけるのでそこそこの知名度?Twitterで乗ってる人の情報がちょいちょい出てくる。ここのHider Discってモデル、どこかで見たことがある形状…
Shanghai ROLLINGSTONE Bicycle Co., Ltd.

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Rollingstone FINDER

SEKA

UCI認証 〇(AFIELD、EXCEED)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 調査中
日本代理店 〇
フレームの形状や塗装、ロゴの雰囲気からFactorからの強い影響を感じる。オリジナリティは乏しいかもしれないが、地味めのルックスはオシャレライダーに受けそう。Twitterで日本代理店の方が呟いているのもあり、最近検索数が上昇中。
SEKA – Sage/Exceed/Keep/Artist
【代理店】
Suzuki (@novacorona_ceo) | Twitter

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SEKA Exceed

TAOKAS

UCI認証 〇(STRIKER)
ブランドページ △
チームへの機材提供 〇
日本代理店 〇
拠点は台湾で深圳にも事務所がある。日本での知名度はいまひとつだが、比較的歴史の長い台湾ブランド。2回くらい乗ってる人を見たことがある。
道卡斯自行車 |

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TAOKAS Striker

Winspace

UCI認証 〇(T1500)
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(Minsk Cycling Team‐CON)
日本代理店 〇
Gustoに次いで有名?「十三峠十三分切り」で取り上げられたあたりから知名度が上がっているように見受けられる。チームメイトも一時購入を検討していた。
Winspace – 2019 UCI Tour of China
【Minsk Cycling Team‐CONのページ】
Home – Велосипедный клуб «Минск»

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Winspace T1500

【追記】
コンチネンタルチーム「スパークル大分」が2022年から使い始めているようだ。
ページを別途作成したので、戦績等はこちらに掲載していく予定。

スパークル大分、2022年はWinspaceを使用

Yoeleo

UCI認証 〇
ブランドページ 〇
チームへの機材提供 〇(CYKELNというイタリアのアマチュアチームへホイールを提供)
日本代理店 ×
独自形状のフレームやアマチュアチームへの機材提供など、やることきっちりやってる印象。
Carbon Bicycle Frames | Road Disc Brake Bikes | Bike Wheels China – YOELEO
www.yoeleojapanshop.com

【CYKELNのページ】
https://www.cykeln.it/

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Yoelo R12

どこから買うか問題

だいたいこのへんのメーカーのフレームは15~20万円で流通している。日本の代理店経由がある場合、海外から買うのと国内代理店を経由して購入するのと、さてどちらが良いのか。個人的にはバラ完である程度のトラブルがあっても解決できる環境(スペース、工具、技術、手伝ってくれるチームメイト等)がある、海外のセラーと英語でコミュニケーション取れる(結構適当なことを言ってくる)ことを満たすなら海外から買っても良いと思う。じゃないなら国内代理店を経由した方が安心だろう。「でもそうしたら高くつくじゃん?」。確かに。でも比較すべきは今までの真っ黒フレームの中華カーボンではなく、アメリカ/ヨーロッパメーカーのミドル~ハイエンドのフレームだ。アジアンブランドはもうそういう段階に近づいていると思う。

 

価格は既存メーカーよりはるかに安く、それでいて性能はレースシーンで証明済み、となったとき、消費者がどう動くのか興味深い。15~20万円というと、メジャーメーカーのエントリーグレードや、比較的安価で流通しているジャパニーズメーカーが競合するだろう。この辺は影響を受けそうな気がする。

まとめ

やはりというか、中国もしくは台湾のメーカーがほとんどだ。
以前中国に行った際、街中はいわゆるママチャリとレンタサイクルばかりで、スポーツバイクはこれからだなぁと感じていた。そして中国の人口は約14億人とでかい!つまり伸びしろしかないと言える。OEMは手堅いビジネスだが、下請け体質から脱却できない。自ブランドを立ててR&Dやチーム運営に投資し、OEM依存度を減らす。そういうビジネスモデルを構築していきたいのだろう。

これからそう遠くない未来、これらのメーカーのどれかが、プロコンチネンタル、もしくはワールドチームに機材提供する可能性はそこそこあるのではないか。既にPardusはシマノのニュートラルバイクとしてツールドフランスに参加している。
ワールドツアーは一足飛びな気はするが、日本の大きなアマチュアレースで上位入賞、くらいはすぐかもしれない*2

 

自分は当面新しいバイクを買わないと思うけど、動向はちょいちょいチェックしてみたい。

*1:ホイールは認証を取得している

*2:この辺は中華所有者としての身びいきかもしれない

 

 

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