『グラベルバイクを買ったらやって欲しいこと3選』というのをXにポストしたら意外と受けました
ちょっと言葉足らずなところもあったので、補足してエントリーを上げておきます
このポストの背景
私はグラベルライドを普段から結構やってて、初心者/初級者とライドする機会も割と多いです。そんな中初心者/初級者の方のバイクセッティングがグラベルにはちょっと辛いな、と感じることが結構あって。特に、ハンドルを低くしてタイヤ空気圧をカンカンに上げたセッティングで走る人が目立つ
それで「グラベル辛いっす、怖いっす」と。なんならグラベル嫌いになってライド自体止めてしまう。ハンドル上げてタイヤのエア抜けばすげー楽よ?って思うんだけど、まぁ説教臭いの嫌いだし、乗り手の方がそれを受け入れる心持ちになってないなと感じることもあって、自分はその場では特に何も言わないんですが
ただ、グラベル向けセッティングというのは間違いなくあるし、少しでも多くの人にそれを知って欲しいなぁと思ってポストした次第
もう少し詳しく説明します
グラベルバイクを買ったらやって欲しいこと3選
ハンドルを目いっぱい上げる
ハンドルが上がると上体に余裕が出来て、バイクコントロールがとても楽になります。さらに目線も高くなり、下りセクションで路面を先々まで追いかけれられるので、気持ちに余裕が出ます。目線が上がるので風景がダイレクトに目に飛び込み爽快です。なのでコラムスペーサーを目いっぱい積んで、ハンドルの位置を上げて欲しいです
肩の力を抜いてリラックスして、バイクをコントロールして悪路を楽しむ、とても大事なことです
チューブレスで低圧運用
グラベルで恐怖を感じる理由のひとつはタイヤが滑ることなんですが、これはタイヤの空気圧が高いと起きがちです。低圧にするとタイヤが変形して路面の凸凹にしっかりコンタクトし、トラクションがぐっと掛かります
グラベルバイクのほとんどはチューブド(チューブ入り)で流通してますが、ぜひチューブレスにして低圧で運用してほしいです
参考ですが、自分は38CのiRC BOKEN 38Cをだいたいいつも2.0BARとかで使ってます。シュワルベサンダーバート29*2.1なら1.8~1.9BARです。チューブドだとこれくらいの低圧だとすぐパンクしちゃうんですよね。だからチューブレス
低圧運用のメリットはえふえふブログさんのこのエントリーに詳しいです
タイヤを目いっぱい太くする
タイヤを太くするメリットはたくさんあります
• 外径が大きくなって障害物の乗り越え能力が上がる
• ショック/振動吸収性が上がる
• 路面接触面積が増えてトラクションが掛かる
良いことしかありません。タイヤを交換することがあったら、ぜひ目いっぱい太いタイヤを入れてみてください。フレームの最大タイヤ幅はおいくつですか?今なら42~45Cが主流でしょうか。ぜひ一番太いのを試してみてください。良いですか、目いっぱい太いのを試すのです
タイヤの銘柄はPanaracer GKかiRC Bokenなら間違いないです。比較的安価で流通量も多く、品質も安定しています
逆に、やってほしくないこともポストしたんですが、こちらも多くの人にリーチしたみたいです
これももう少し詳しく説明します
グラベルバイクを買ったらやってほしくないこと3選
ハンドルを目いっぱい下げる
ハンドルが低いとダウンヒルで重心が前に行って恐怖を感じます。目線も下がるので、路面の変化を追いかけられず、常に緊張感を強いられます。グラベルライドに不慣れなうちは良いことがありません
気持ちは分かります。ハンドル低いとなんかかっこいいし、エアロダイナミクスも良いので舗装の平坦は速く走れます。でもグラベルはしんどいわけ。何のためにグラベルバイク買ったのかって話なんですよ。グラベルを楽しむために買ったバイクなのにグラベルが楽しくないって本末転倒じゃないですか
良いですか、何も考えずにハンドルを下げてはいけません
タイヤを高圧運用する
具体的には3気圧とかなら高すぎます。トラクションが抜け、悪い路面で滑り、ダウンヒルではいつ吹っ飛ぶか気が気じゃなくてスピードを出せず、ずっとブレーキ掛けてるから手が疲れ、さらにスピードを出せなくなり、の悪いスパイラルに入ります
高圧だと登りが速くなるような気がしますが気のせいです。荒れた路面ではトラクションが掛からないのでむしろ遅くなります
良いですか、何も考えずに空気圧を上げてはいけません
軽量化にコストをかける
グラベルライドは常に激しい振動に晒されますし、飛び石や枝の巻き込み、あるいは落車の可能性もロードと比べると高いです。軽量化と引き換えに失うのは耐久性です。簡単に壊れてしまうようなパーツを使うべきではありません
グラベルライドはインフラから隔絶されているケースが多く、山の中での機材トラブルはハイリスクです。生きて帰る、それが山を走るライダーの努め
軽量カーボンパーツ、チタンボルト、アルミカセット/ローター、やめましょう。良いことありません。質実剛健、ライフタイムワランティ、そういう基準でパーツを選んでください
良いですか、何も考えずに軽くしてはいけません
やってほしくないことって要はロードバイクに寄せるってことです。どんだけやってもそれは似非ロードバイク。グラベルバイクは別のベクトルで良さを出すべきです
余計なお世話じゃね?
Xでも指摘受けたけど「グラベルバイク/ライドは本来自由なものなんだから好きにすればよくね?」はいその通りです。マジで余計なお世話だと思います
ただ、世の中の情報は圧倒的にロードバイクに偏っていて、初心者が好きにするとその手の情報に引っ張られてグラベルバイクをどんどんロードバイクに寄せていってしまうんですよね。それはグラベルバイクの良さをスポイルします。余計なお世話は承知でこのエントリーを上げました
あと経験者/熟練者の方からネガティブなレスポンスいただきました。「俺ならそんなことしねぇよ」と。この内容はグラベルバイク買ったばかりの方に向けています。この3選はスキルもフィジカルも一定以上ある人にも当てはまるとは思いません。ベテランは好きに走ってください
もっと言うと走る場所によってベストな解は変わるし、全員が全員にフィットするセッティングなんてありません。でも、ハンドルの高さとかタイヤの空気圧なんて簡単に変更できるじゃないですか?試して合わなかったら戻せば良いだけです。食わず嫌い良くない
グラベルバイク買ったら本当に試して欲しいこと
このポストが自分が一番伝えたかったことかもしれません
ロードバイク的価値観というのは、ツールドフランスにまで繋がるコンペティションの価値観です。いまの日本ではこのロードバイク的価値観が非常に貴ばれています
ショップもそれに則ってグラベルバイクを売っちゃうことが多いように感じます。ハンドルの位置決めするときにエアロダイナミクスに優れている位置を無意識に選んでしまう(というか何も考えずに決めているようにも見える)
メディアも「レーシンググラベル」について紙面を割きすぎてるきらいがあります。Unbound Gravelで使うバイクやそのアッセンブルを世の中の潮流として扱い過ぎてます。固く締まったド平坦なグラベル路が10㎞ひたすら続く、みたいなシーンは日本にはありません
グラベルバイクの本質はロードバイクのそれとは違うんだ、ということを理解してほしい。「悪路でバイクをコントロールすることを楽しむ、ロードバイクとは別の乗り物」だと
Xの反応と自分の見解
いくつか反応がありました
ふたつポストを紹介しつつ、ひとつにはちょっとだけ反論しておきます
グラベルバイクでも、メーカーがジオメトリ考えてくれてるので、コラムスペーサーは、あっても1枚か2枚のが使いやすいと思いますよ〜
そもそもロードよりハンドル高いし。
Unbound Gravelみたいなコースを走ってると、空気抵抗の都合上、下ハンの時間も増えてしまう。— Masahiro Fukuda (@HsFukuda) September 3, 2024
- ジオメトリーはメーカーが決めているので極端なポジションは避けるべき
- コラムスペーサーは、(無いか)あっても1枚か2枚
- Unbound Gravelとかでは低いハンドル位置が有利
ということですね。「ロードバイク的価値観」が現れてる典型的なポストと言えます
ジオメトリーはメーカーが決めていますが、ハンドルの位置はコラムの出ている範囲で好きに決めて良いはず。それがメーカーの提供する「遊び」です。どこにセットしても間違いありません。ハンドルが高いメリットはコントロールが良くなることで、初級者はハンドルを上げる意味が大きいです
コラムスペーサーゼロというのは、そのバイクに理想的なフィールドを理想的なライダーが走るときに実現するセッティングです
またUnbound Gravelを引き合いに出してますが、そんなロケーションが日本のどこにあるのかという。日本は山がちで雨量が多いんで、雨水で溝が出来た斜度のきつい林道がグラベルライドのメインフィールドです。もちろん舗装比率が高いのでエアロダイナミクスに優れているポジションは有効なんですが、それを優先して山岳グラベルで恐怖するの本末転倒。そもそも「舗装路を高速で走る」ことを大事にする価値観そのものがロードバイク的だと思います
もちろんロードバイク的価値観をグラベルに持ち込むの、全然ありです。Unbound Gravelもグラベルライドの一つの楽しみ方です。しかしそれは正義ではないしグラベルど真ん中ではないし、ましてやオフロードライドに不慣れな人にお勧めできるものではない
動画は千葉房総ですが、路面は溝だらけで斜度がきついのが分かるかと
ちなみにこっちは対照的なポスト
(時間軸的にはこっちのポストが自分のポストより早いのですが関連してると思うので)
普通のロードから、エンデュランスに乗り換えて、一度や二度乗ったのちに「ハンドルが高い」というのは、「そりゃそーだ」ということ。姿勢が低くないと走れないというのは思い込みであり、高いことで得られるメリットを考えるべきなのです。新しい世界への入り口。
— 都内のメリダパートナーショップ「サイクルショップマティーノ」 Eバイクの試乗車を6台常設 (@mps_mattino) September 3, 2024
予め「スペーサー抜いて下げられます」と伝えると、すぐに「下げたいです!」となるんですよ。まあ、気持ちはわかる。でも、そのままひと月ふた月と乗ってほしい。そして、下げて変化を試してほしい。全てはお試しの連続でしかない。
— 都内のメリダパートナーショップ「サイクルショップマティーノ」 Eバイクの試乗車を6台常設 (@mps_mattino) September 4, 2024
「フォームは決めちゃダメ」だとぼくは思う。スタイルは決まるし、フォームを作るときの公式は決まるんだけど、変数の部分はいつもフリーになってる方がいい。フォームを決めるための数式を絶対値で考えない方が遊べると思う。
— 都内のメリダパートナーショップ「サイクルショップマティーノ」 Eバイクの試乗車を6台常設 (@mps_mattino) September 4, 2024
このポストはエンデュランスバイクに関してですが、グラベル系も全く同じ
コンペティションロードの場合は速く走るためのセッティングやペダリングがほぼ決まっていて、肉体をいかにそれに添わせるか(無理なら妥協点を探る)、ということが求められます。自分の体をシステムに従属させる、とも言えます
グラベルライドはその幅が非常に広いですし、そもそもグラベルの場合「速さを競う」ところから離れたところにこそ魅力があります。自分の体でシチュエーションをコントロールする、とも言っていい
まとめ
グラベルバイク買ったら試していただきたいこと、それは
ハンドルを高く、タイヤは太く低圧で、ロードバイク的価値観は忘れるです。ぜひよろしくお願いいたします
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