日本的グラベル遊び
以前のエントリーでこう書いた
「日本的グラベルバイクの遊び方」、つまりローカライズを真剣に考え、提案していく必要があるのではないか
今読み返すと謎のウエメセw
昨年あれこれグラベルにまつわる記事を読んだり、メーカーのインプレッションを読んだりしたわけですが、個人的にはメーカーのプロモーションもメディアの記事にも多いに不満があるわけですよ
見たこと無いような広大なグラベルを走り抜けるかっこいい外人ライダー、みたいな記事やプロモーション見ても「まずはそのグラベルっていうのを屏風から出してくれよ」と思う
単に本国のマーケを翻訳して垂れ流してるだけじゃん
日本と言うマーケットに合わせてオリジナリティを追求して盛り上げて行こう、みたいな気運はミリも感じない
というか
というかUnbound Gravelみたいな絵にかいたようなグラベルって、きっと世界にはほんのちょっとしかなくて、それぞれのお国柄/土地柄に合わせたローカライズが必要なんだと思う。日本は割とグラベルライドのフィールドが狭く、しかもMTBトレイルと同じく情報が秘匿されがち。そういった背景を踏まえて、メーカーやメディアやショップは遊び方を提案しないといけないのではないかと思ってる
昨年、色々とライドしていく中で、なんとなく日本的グラベル遊びってこういうものなんかな?というのが見えたような気がするので、備忘がてら残しておく
具体的な日本的グラベル遊び
グラベル+野点
野点の心は日本の心
グラベルフィールドは主に山の中であり、カフェはおろかコンビニすらない。あるのはただ自然の景観だけである。これを楽しむのもは、そう野点だ。美しい風景を楽しみながら飲むお茶(コーヒー)を楽しむ、これすなわち侘び寂び
野点(のだて)とは、屋外で茶または抹茶をいれて楽しむ茶会のこと。特に茶道において戸外で茶を点てる(たてる)ことをこのように呼ぶが、茶道など日本古来の様式にしたがっている場合には一律にこのように呼ばれ、屋内での茶道では重視される細かい作法が簡略化された気安い催しの場合もある。
別に抹茶は要らず、ドリップコーヒーとお湯だけあれば良い。大事なことは「ゴールへ向かうことをライドの目的としない」、ということだと思う。風景やチームメイトとの語らいを楽しむことが大事
グラベル+海鮮/魚介
日本人は結構な頻度で生魚を食べるが、こういった文化は世界的には比較的珍しい。これは日本が島国で海に囲まれていること、昔から生食する文化的背景といったことに加え、現代日本の優れた冷蔵/冷凍技術、ロジスティックスの存在がある
技術が進んでいるので、別に首都圏でも新鮮な魚介が食べられるわけだけど、それでも港町で食べる魚介類の旨さには格別のものがある。以前、房総のグラベル帰りに金谷で食べたアジが驚くほど美味で驚いた
グラベルついでに海鮮/魚介、日本的グラベル遊びとしてアリだと思う
グラベル+温泉
日本と言えば地震国で有名だが、これは同時に温泉が多いということでもある。そして温泉はだいたい地震活動が活発なエリアにあり、比較的都市部から離れているケースが多い。あれ、これはグラベル遊びにぴったりじゃね?
2022年に奥鬼怒温泉にグラベル経由で行った際は、「こ、これぞ日本のグラベルライドの真骨頂!」と思った
日本には約3000ヵ所の温泉があると言われていますが、世界では中国や台湾、アイスランド、イタリアなど、日本同様に火山帯に位置する国々が「温泉王国」として知られています。
グラベル+廃墟
低成長下の日本では、これから廃墟が沢山生まれてくる
(廃墟ではないが)中銀カプセルタワービル解体のニュースは記憶に新しい
デザインが革新的だったとは言え、都心のポンコツビル(言い方)が50年に渡って生きながらえたことは、やはり日本に余裕がなくなっている証だと思う。成長著しい国なら文化財として認識される前に取り壊されるし、豊かな国なら移設なり保存なりするだろう
廃棄された集落、昭和に流行った温泉街、潰れたドライブイン、バブル期に建てられたナーロッパなラブホテル…。グラベルはこういった廃墟と相性が良い
グラベルライドのだいご味のひとつに「ポストアポカリプスみを味わう」というのがあると思う。誰もいない未舗装路を走っていると、現代文明が終わった世紀末の世界に紛れ込んでしまったかのような錯覚を覚えるときがある。廃屋眺めながら「行こう…ここももうじき飲み込まれる…」みたいな中二なことを考えると割と楽しいw
前向きに捉えれば、これから日本は廃墟マニアにはたまらない国になるわけで、「廃墟=日本」と言われる日もそう遠くないかも?「すずめの戸締り」を観た人にしか分からない話で恐縮ですが、廃墟に心動かされる人、割と多いと思う
グラベル+史跡
廃墟巡りと似ているが、グラベルに点在する史跡を回るのも面白い
古道や廃道の沿道にある馬頭観音や道祖神の写真を撮るだけでも楽しいし、立ち寄る場所が古戦場跡や城跡、古墳、墓所、有名な石碑などならさらに気分がアガること間違いなし
通常のライドは地理的な移動なわけだけど、史跡巡りを加えることで「時間軸の移動が加わる」わけですよ。往時に心を馳せ、在りし日の人の営みを想像することでライドに深みが出る
これは本当にとっておきの秘密なのですが、どのような街でも、googleマップで「史跡」と調べるだけでおもしれースポットで構成された街歩きマップが出来上がるのでものすごーーくおすすめです pic.twitter.com/9VYLsuUHK1
— zinbei (@tz036) December 20, 2022
グラベル+冨士山
ふーじーはにーっぽんいーちーのやまー!
富士山周辺には林道が沢山走っていて、何回やっても楽しい。日本一のグラベルはもしかするとニセコエリアかもしれないが、富士山周辺も負けてない
「富士講」はじめ、江戸期の山岳信仰の名残が随所に残っていて、史跡巡りライドとしても楽しい
グラベル+初日の出
グラベルはだいたい山の中にあって展望の良いところからは海が見えたりする
山の中なら人も少ないし、初日の出を一人で、あるいはチームメイトと独占することはかなり楽しいのではないだろうか?ついでに「走り初めかつナイトライド」とかなりレアな体験にもなる
と、今年やろうかと思って計画していたのだが、年末に手首を痛めてしまい残念ながら断念。来年はやりたい
グラベル+桜、紅葉
グラベルのフィールドは基本山の中だし、自然が多い。四季折々の植物、特に春の桜と秋の紅葉とライドを組み合わせること、これは極めて日本らしいグラベル遊びと言えるだろう
何回も走っているルーティンなグラベルでも、少し調べれば謂れある土地の名木が出てくるはずだ。こういうのをめあてに走るのはありかもしれない。
こんなところだろうか?
他にも「グラベル+ドボン(渓流遊び)」とか「グラベル+蔵元訪問」「グラベル+焼き芋」「グラベル+釣り」とか考えれば色々あるんじゃないかな。日本のグラベルフィールドはけして広いわけではないが、色々トッピングしたりして、楽しむ余地は結構あるんじゃないかと思う
まぁ、言うて日本って縦長で、けして地理的に均一でもない。ニセコと富士吉田と四万十では全然違う遊び方になるだろう。全般的なローカライズはメーカーやメディアが受け持ち、地方ごとのローカライズは地元のショップなどが力を入れる、といった役割分担が必要なのかな?
ちなみに四万十では「グラベル+パックラフト」という遊びがあるらしい。何それ楽しそう
まとめ
走ることやグラベルそのものを目的にすると、ややもするとライドがエスカレーションしてしまう傾向があるなと以前から感じていて、「もっとやばいグラベルを!」「もっと距離を!」「もっとガレを!」となってしまいがち。行きつく先はUnbound Gravel300。でもグラベル遊びは本来もっと自由で、もっと身近で良いなと思う。UGを頂点としたヒエラルキー構造は否定しないが、それが全てでもないかな
以前書いた通り日本ではグラベルライドは全く流行っていないが、色んな人間が日本的グラベル遊びを追求して、そして日本にグラベルカルチャーが根付いていってくれたら良いなと思う
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