直近でe-MTBに乗って、機材は数年前と比して成熟が進んでいると感じた。これから数年間で普及が進み、e-MTBがこれからのメインストリームになる予感がする。
どんなことがこれから起きてくるのかなとつらつらと考えてみた。
e-MTBに乗ることのユーザーのメリット
e-MTBのメリット
脚力が不要になる。これは単純で、デカい。魔法の杖だよ。あと、これによってみんなまとまって走れるようになる*1。脚が揃わないメンバーで走ると、「待つこと」「待たせること」がどうしても発生してしまっていた。それがなくなる。
スキルアップに繋がる。e-MTBなら繰り返し練習が延々できる。結局のところスキルアップとは、動作を最小単位に分解し、身体に染み込むまで繰り返すということ。今までは体力がその限界だったが、e-MTBなら時間とバッテリーの許す限り練習が出来る。
人力の限界を超えることが出来るので、今まで走れなかった場所が走れるようになる。パワーを活かして急斜度の登りはもちろん余裕。獲得標高を稼いでも疲れにくいので、森林限界を超えるような高高度エリアでもライドが可能だ。
e-MTBの普及で市場はどう変わってくだろうか?
e-MTB普及によるマーケットへの影響
脚力に無関係で走れる、となると、やはり女性とシニア層が多く参入してくるだろう。また、スキルはあるけどFTP系トレーニングとは無縁だった、BMXやトライアル系ライダーがもっとe-MTBで山を走るようになるかもしれない。こういった新規参入でMTBマーケットの拡大が予想できる。具体的にどのくらいかは分からないが、今より明らかに大きくなるだろう。
海外通販下火。海外で流通しているe-MTBは認定登録できない。しかも、PU周りのメンテナンスは素人ではかなり難しい。ノウハウの蓄積されている直営店かオンリーショップで買うのが主流になるのかな。
新しい所有形態の登場。普段はペダルバイクでスポットでe-MTBをレンタルとか、サブスクリプションとか、「所有から利用へ」という流れがあるかも?
乗り方、イベント
e-MTBは人力を超えた出力が出るので、まったく新しいフィールドの開拓が可能だ。トレイルライドは人里に近い低山が中心だったが、デポ地から離れた深山や、森林限界を超えるような高高度のトレイルが登場するだろう。
また、トレッキングツアーやバックカントリーツアーが増える。e-MTBは車でのシャトルアップが不要なので、商売としてみた場合、固定費が掛からなくて損益分岐点が下がる。
はじめてMTBに乗る人たちをe-MTBツアーに誘導することで満足度を増やせてる。搬送車で山に運ぶとMTBに乗ってない時間が発生するけどそれが無く、自分の脚で漕いで自由に山を駆けてる感覚にもなれる。搬送の燃料も使わないしドライバーも必要ないから経費も削減。雇用は、減ってるか…
— 松本潤一郎 | 伊豆の山と海 (@junichiro_izu) 2021年3月29日
MTBパークの拡大。急斜面の登りがあっても問題ないので、パーク設計の自由度が上がり、MTBパークは増えるだろう。これはマーケット拡大で増えたライダーのスキルアップをサポートする役割も果たすので結構重要だ。
e-MTB専用イベントの開催。本質的にe-MTBと人力MTBの楽しみ方は違う。e-MTB専用イベントが多く開催されるか、イベント内容がe-MTBの乗り方を意識したものに変わっていくだろう。さっそくENS-eとしてe-MTBオンリーイベントが4月に開催される。
ens.dynoco77.net
新規ユーザー流入によるマーケット拡大。そして人力では難しかった新しいフィールドの開拓。大きな変化はこの2つだろう。
当然、ユーザーである私達の意識も変わっていく
ユーザーの意識
フィジカル至上主義からの脱出。e-MTBに対して、「高齢になり脚が衰えたら…」と考えてる人は多いだろう。でもこれは勘違い。メリットのところでも触れた通り、繰り返し練習によるスキルアップ、脚力に余裕を残せるからライドの最後まで集中力が続く、などメリットは計り知れない。FTPが高いやつが偉い、的なヒエラルキーは解体してくだろう。MTBライダーとローディーは結構な範囲で重複しているので、これは、ロードバイクユーザー特有の「脚があってナンボ」という意識に引っ張られている部分があると思う。
まさにゲームチェンジャーと言う言葉がふさわしいかも知れませんね。
ただそれだけに意味も無く拒絶反応を示す人も多いいのだろうな。
これに乗って山を走れば一発で拒絶していたことが無意味だったことに気が付くんだけどね。 https://t.co/bm6qpgHc2H
— Clean Water Factory (@gXUJeXI1Gq6KDmO) 2021年3月26日
当然良い変化ばかりではない
問題・課題
地域住民とトラブル増。ユーザーが増えると、今まで守られてきたローカルルールが不徹底になり、地域住民とトラブルが増えることは間違いない。高高度ライドやバックカントリーライドが増えれば、今まで接触がなかった高山ハイカーやハンターとのトラブルも増えるだろう。
トレイルへのダメージ問題。マーケットが拡大すればメンテナンスが追い付かず、トレイルが荒れるリスクが高い。特にe-MTBはトルクが太いのでトレイルに溝が掘れたり、道が根っこだらけになる可能性も。トレイルの管理にe-MTBを活用すれば今までより高頻度にメンテナンスが出来るだろうし、かならずしもe-MTBが悪というわけでもないが…。以前も書いたけど、トレイルというリソースは有限で、その管理には十分な配慮がされるべきだと思う。
さて、そのようなトラブルが実は過去にもあった。1990年代マウンテンバイクブームだ。
90年代MTBブーム
90年代にMTBが日本で爆発的ブームになった。自分もそこでShaun Palmerの洗礼を受け、ファットアルミチューブのフルサスMTBに未来を見たクチだ。しかし、爆発的にブームとなったMTBは、2003年以降急速に萎んだらしい*2。色々調べたのだが明確にブーム終焉のなぜを説明している文章は見つからなかった。ただ、MTBerが離脱した背景に、ハイカーや地域住民とのコンフリクトが一定の影響を及ぼしたことは間違いない。
これから始まるe-MTBマーケット拡大で、前回ブーム時と同じように、トレイル利用する利害関係者と問題が発生するとみている。個人的にはこの問題については割と悲観的な立場だ。なぜなら、90年代のブームがなぜ終わったのかについての分析とコンセンサスが業界で得られていないから。良く分かってないんだから、対策しようがないよね。こういうときに主導すべきメディアがちょっとあれだし、メーカーもなんとなくあれだし、正直期待薄*3。
これを解決し、MTBマーケットをサステナブルに発展させていく。そのために何が必要か、メーカー、ショップ、イベンター、メディア、ライダー…みんなが考え、発言し、実施していくことが重要。MTBerによる自主規制*4や、業界団体でのロビー活動、トレイル保全団体へのサポートなどなど…。
— pon (@kampari_5) 2021年3月30日
まとめ
e-MTBはゲームチェンジャー
e-MTBはフィジカルの格差を解消し、多くのユーザーが流入する。
e-MTBによって新しい市場、新しいフィールド開拓が進む
e-MTBの影響で、90年代ブームと同様の問題が発生し、その解決には困難が伴う。
自分の頭ではこんくらい。e-MTBの普及で、想像も出来ないようなもっと面白いこと(と面倒なこと)が起きると思う。なんとか予算をやりくりして手に入れたいんだけど、まだFM936買って一年だからなぁ。。。
【閑話①】ロードバイクは?
電動アシストのロードバイク、e-Roadはどうなんだろう?
e-Roadの普及は先になりそう。①ロードはアシストが切れる24㎞/h以上で走ることが多いことや、②重量に対する根強い信仰がある、③コンペティション重視のユーザー層が多い、等を考えると、e-MTBが先に市場を作っていきそう。
【閑話②】ショップやメーカーの売り方
e-MTBに関してはショップがプッシュすればするほど冷ややかな目線が注がれやすい。自分も少し前まで「これからはe-MTB」とか言われても、うっせぇわ、と思ってたw。売り方は慎重にしないとユーザーの反発(というか誤解)を生みやすい。
どちらかというと「アンバサダー」スタイルというか、サポートライダーに情報発信してもらう方が納得力のある文章が生まれそうな気がしている(YAMAHAさんぜひ俺にお声がけくださいw)
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