グロータックとはどんなメーカーなのか
EQUALのブレーキは使ってるし、防振スポンジ台(ブルカット2)も以前持っていた。ローラー台もシクロクロスのアップ用に欲しいし、自分には結構身近だ
メカニカルディスクブレーキ、ローラー台用防振スポンジ、コンパクトなローラー台。精度とアイディアを武器に大手が手を出さないニッチで勝負する小さなメーカー。「なんかマニアックなもの作ってるよね」くらいに捉えていた
今回新製品を見て、マニアックでニッチな製品という評価は表層しか見ておらず、その本質を見誤っているんじゃないかと思った。グロータックの本質、それはパンキッシュなモノ作りの思想の表れなんではないだろうか
グロータックの新製品
サイクルパーツ合同展示会に出展され話題をさらったのは、このコントロールレバー
どんなディライラ―も動かせる上にひとつのレバーで2本のシフトケーブルが引けるとか、面白すぎるんですけどww
シマノやスラムのモノづくり思想と全然違う
シマノやスラムの思想
シマノやスラムに限らず、近年のコンポーネントメーカーの設計思想は大きく2つの軸がある
ひとつはインテグレーション化。フレーム以外の全てのパーツを同じグレード揃えて使用することを前提とした考え方。ロードならロード、MTBならMTB。デュラエースならデュラエース。XTRならXTR。基本混ぜて使うことはない。とても効率的だが、部分的に別のパーツを使ったりは出来ない。コンポーネントの世代が代わる際は原則としてパーツ全てを入れ替える
もうひとつはブラックボックス化。無線化や電動化といったトレンドに顕著だが、基本的にパーツの内部構造をユーザーが触ったりカスタムしたりすることが出来ない。モジュール化されていて、修理というよりユニット丸ごとの交換、となるケースが多い
フレームメーカーのデザインも、ケーブル完全内装など、この2つの思想に沿った物作りをしているのが伺える
インテグレーション化も、ブラックボックス化も、パフォーマンスを追求する中で生まれた思想。レースに出るならこの方向性は当然と言える
インテグレーションとブラックボックスの欠点
これらの思想によって生まれたプロダクト、パフォーマンス満点なのだが問題もある。近年注目を集める「修理する権利(Right to repair)」を棄損している可能性(※)があったり、あるいは「DIY(Do it yourself)」との相性が悪かったり、だ。もっと大きく捉えればサステナブルなプロダクトと言えない
例えば世代交代したグループセットは多くがセカンドマーケット(メルカリやヤフオク)に流れるが、中古流通されずそのまま廃棄されたり、ユーザーが死蔵してしまうケースも多い
コロナ以降のパーツ不足でバイクが稼働しない状況も良く見かける。インテグレーション化されているので何か一つでもパーツが欠けていると走ることが出来ない。ブレーキパッドが無くて走れない、とか、STIの納期が1年なので絶対に壊せない…みたいなやつ
※もちろんシマノはかなり細かなスモールパーツをユーザーのために用意していて、ちょっとした修理は可能。しかしDi2登場以降、ディレイラーやSTIはどんどん高度化、複雑化していて素人の手に負えないところが増えている
グロータックの設計思想
対してグロータックは修理する権利やDIYに対して非常に寛容だ。むしろその思想に則ってモノづくりをしていると言える
なんせ、同社のヒット商品、EQUALのブレーキは完全分解しての整備が可能で、メーカーもそのやり方を公開しているんである
ブレーキが完全分解可能、というのはこれはもうめちゃくちゃ大胆なことで、普通は事故防止のためにコアパーツは分解不可か、特殊工具が無いと開けられないようにする。グロータックはユーザーの修理する権利を重視して分解可能にした。言い方を変えればユーザーを大人扱いしている
大人扱いと言えば昨年参加したバイクロア。ここのイベントは「参加者を大人扱いする」という主催者の哲学が伺えた。たぶん、この部分での共鳴があるのだろう、バイクロア参加者とグロータックユーザーは結構被ってると思う
今回発表されたコントロールレバーも、内部のパーツをユーザー自身が交換/メンテナンス出来るように配慮されていることが伺える。囲い込みをせずに他社製品との互換性を確保すること、ユーザー自身がメンテナンス出来ること、これはグロータックにとって非常に重要なのだろう
つまり、アンチインテグレーション、アンチブラックボックスがグロータックの設計思想だ
「輪界ガタリ」のインタビューでも、その思想が語られている
シマノ、スラムと真逆だよね
まとめ
グロータックの思想はアンチインテグレーション、アンチブラックボックス。既存コンポーネントメーカーへのカウンターで、自分はこれをパンキッシュな精神と捉えている(別に社長の木村氏はそう考えていないかもしれないが)
グロータック社の製品は最も優れたコンポーネントではないし、最も美しいコンポーネントでもない。しかし、そのモノづくりの思想ゆえに一部の人間に強烈に愛される。
グロータックはオルタナティブな、コアなファンを持つコンポーネントメーカーとして成長するだろう。平均点なモノづくりをしがちな日本企業が多い中、これだけ強い思想を形にするメーカーが日本から出てきたことに気づいてとても驚いている。個人的には予算の許す限りここのプロダクトを応援したい
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