マウンテンバイカーズ白書

MTB

レクリエーションのためのツールとして、スポーツや競技のツールとして、アウトドア派のサイクリストから注目されているマウンテンバイク。本書は、日本のマウンテンバイカーを取り巻く現在の環境について、野外フィールドの運営・維持に携わるエキスパートほか、多方面より情報を収集。持続可能なマウンテンバイクシーンを築くためのヒントが得られる1冊となっている。

【目次】
第1章 MTBの野外フィールド確保を目指す地域連携活動
第2章 日本におけるマウンテンバイカーの歩みと現状
第3章 地域と結びつくマウンテンバイカーの野外フィールド
第4章 MTBの野外フィールド創りの技術とノウハウ

Twitterで見かけて購入。
色々と考えさせる内容だったので、自分が考えるMTBシーンの問題点の整理というのも兼ねてエントリーを起こすことにした。

日本のMTBシーンの問題点

過去何回かエントリーを起こしているが、日本のMTBシーンの問題点は3つあると思っている。
①トレイルを取り巻く利害関係者との調整
②オフロードトレイルのキャパシティーは有限であること(ライダーが増えると荒れる)
③ローカルライダーの保全努力と、都市部ライダーがフリーライダーとなることの対照性

他にもあると思うが、こういったことが原因でトレイル情報は長年秘匿されてきた。フィールド情報は口伝。雑誌には機材の記事が主に乗り、フィールドに関しては記事化されることは少なかった。これによって新しいライダーの参入障壁が高まり、シーンの停滞を招いたんじゃないだろうか。ここをクリアしないとMTBシーンの拡大と発展は望めない。これが自分が考える問題点。

 

以前トレイルに関わる人から聞いた話。「トレイルランナーは〇〇山を中心にイベントを行うなどして地域にお金が落ちるように気を遣っている。対してマウンテンバイカーは山を勝手に走るだけで何もしないから地域住民から嫌われているよ」
ヤリたいときだけ急に呼び出して終わったら「早く帰れよ」みたいなやつ(ひどい例えw)が好かれるはずないよね。この話はそのまんま問題点①が表出している格好だ。

そんなこんなで現時点ではMTBシーンは冷え切っているわけだけど(個人の感想です)、そんな中こんな雑誌(白書)が出たことにかなり驚いた。

本書の内容

どんな内容が載っているかというと
日本のトレイルシーンを支えるトレイル保全団体/パーク運営団体がほぼ全て掲載。また、海外のトレイル事情やメディアの動向についても紹介されている。彼らがどこで、どんな活動をやっているかを紹介したのは日本でははじめてじゃないだろうか?自分もトレイルに行ってローカルの人と話したり挨拶したり程度はあるが、こういった深く立ち入ったところまで知らなかったので非常に勉強になった。
こういった人たちの活動によって、3つの問題点のいくばくかは少しづつ緩和/融和していってるのではないかと思う。そういう意味では活動に関わっている人たちには足を向けて寝られない。

白書自体は、僕らマウンテンバイカーだけではなくて、もっと広くフィールドに関わる人みんなに向けて書かれているのではないかという印象を受けた。

・地権者や地域行政へのロビー活動支援として
・トレイル保全団体へ光を当てることで、保全に関わる人材/資金を確保すること
・今まで弾かれがちだった初心者向けのガイドになること

といったことが狙いだろうか?
もちろん、全国のフィールド情報が載っているので、ライダー的にも非常に有益な情報が沢山掲載されている。

 

あと、個人的には『広告が載っていないこと』も驚いた。自転車雑誌ではお馴染みの、メーカー/機材/ショップの広告が一切入ってない!*1。この白書のターゲットがMTBユーザーに留まらないように、地権者や地域行政に関わる人たちにも読んで欲しいという意図がこういったところにも表れているのかな。*2

ちょっとだけ白書から引用

「ここが走れなくなったら違うところへ行けば良い。オレ達、MTBニンジャだぜ」では、いつまでたっても理解を得ることは不可能。(略)
ともあれ、この数年で日本各地にローカルトレイルの保全活動を行う団体も増え、さまざまな形で「MTBが持続的に走れる環境づくり」に取り組んでいるが、より社会への融和を図るために、もっと具体的な”力”が必要になってくる。
(略)「MTBはサイレントマイノリティなのがクール」というスタンスでは、永遠にトレイルシェアの仲間になることは出来ない。(略)

これは本当にそうで、こういった活動が実を結んで日本のMTBシーンが前向きに進んでくれたら良いなと思う。

日本のMTBシーンの将来は明るい?

どん底の日本のMTBシーンにおいてこういった本が出たのはすごいことだと思う。じゃぁこういう活動によってこれからどんどん盛り上がっていくか、と言うとちょっと微妙なんじゃないかと思う。うーん、いいとこ現状維持くらい?

日本のMTBシーンの将来像

自分がなんとなく考えるMTBシーンの将来像ってこんな感じだ。

「マウンテンバイクは、e-MTBの普及により機材価格が高騰し、お金に余裕がある一部の人だけが楽しめるニッチでマイナーな遊び」になっていく、というもの。ウェイクボードとか、カヌーとか、大がかりな水辺のスポーツみたいな、というと伝わるだろうか。規模は縮小するも、ユーザーひとりあたりの課金額を拡大して生き延びる、みたいな。別にそうなって欲しいわけじゃないんだけど、今の延長線上にありうる未来だと思う。

 

買って応援

とは言え、本書の意図を否定するつもりは全く無く。僕らライダーも、特にエイジドライダーはどのようなことが国内で起きているか勉強しておくべきだし、読んで個々人が考え、発信することは非常に意味があることだと思っている。
そして、発行した辰巳出版が儲かって、続編なりMTB関連出版物が増えることを期待する意味でも、興味がある人はみなさん買いましょう。買って応援です。んで、お近くの団体があればコンタクトを取ってみましょう。活動にちょっとでも関わることが未来に繋がっていくと思う。関係者だって霞食って生きているわけじゃないしね。

 

【閑話】
そういや日本最高と個人的に思う某トレイルに関して記載なかったね。なんで?

*1:シマノとスペシャライドはじめいくつかのメーカーが協賛しているが、最後のページに文字として記載されているのみ

*2:広告が無いせいだと思うが、お値段は2,800円(+TAX)とややお高め

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